auフィナンシャルサービスは2026年3月25日、新しい「au PAYカード」の申込受付を始めた。今回の刷新(PDF)は券面変更のニュースに見えるが、本質はそれだけではない。横型の通常券面に加えて縦型のナンバーレスを選べるようになり、AndroidではGoogle Payで店頭タッチ決済が使えるようになった。利用速報のPUSH通知にも対応し、au PAYカードアプリからの申し込みでは最短数分審査・即時発行も打ち出す。3年前の刷新が「カードそのもの」の更新だったとすれば、今回は「スマホでどう使うか」まで含めた見直しだ。 今回のアップデートはここ 項目 今回の変更点 利用者目線の意味 券面 横型に加え、縦型ナンバーレスを選択可能 カード番号を券面に出したくない人には分かりやすい改善。番号確認はアプリで行う スマホ決済 Google Payに対応。Androidでも店頭タッチ決済が可能に iPhone中心だったスマホの店頭決済が、Androidでもようやく本格対応した 利用通知 au PAYカードアプリの利用速報PUSH通知に対応 これまではメール通知のみだったが、より不正利用や使いすぎに気づきやすくなる 申込体験 アプリ申込なら最短数分審査、審査承認後に即時発行 カード到着前からネット決済やスマホ決済を始めやすい 3年前との違い 前回の2023年刷新は、タッチ決済機能をカードに標準搭載し、カード番号と有効期限を裏面へ集約するのが中心だった。今回の刷新はその延長線上に見えて、実際には少し性格が違う。テーマが「プラスチックカードの見直し」から、「スマホ前提の使い方」へ移っているからだ。今回の目玉はホログラムの新デザインより、Google Pay、ナンバーレス、利用速報PUSH通知の3点とみるほうが実態に近い。 なぜ「セゾン色」が強いのか au PAYカードの発行主体は引き続きauフィナンシャルサービスだ。その一方で、実務面は二系統に分かれている。公式FAQを見ると、2024年12月18日以前に申し込んだ管理番号「9」始まりのカードは発送や口座振替・請求業務を三菱UFJニコスに委託しているのに対し、2024年12月19日以降に申し込んだ管理番号「5」始まりのカードはクレディセゾンに委託していることがわかる。 今回の刷新は、この「5」のクレディセゾンの系統の仕様が利用者の目に見える形で前面に出てきたと考えると分かりやすい。管理番号「5」始まりの利用者は、手持ちカードのままでGoogle Payや利用速報PUSH通知を使え、有効期限更新時に新デザインへ順次切り替わる。一方、旧来の管理番号「9」始まりは、新デザインやGoogle Pay、アプリ利用速報通知を使うにはカード契約の切り替えが必要だ。つまり、単なる券面変更の日というより、2024年末から始まっていた新しいau PAYカード系統がユーザーにはっきり見えるようになったということでもある。 興味深いのは「セゾン系の流れの上にあるのに、Google PayはQUICPayではない」こと 今回のau PAYカードのGoogle Payは、レジで「クレジットで」または「タッチ決済で」と伝え、タッチ決済で使う形になっている。Google Pay上で「QUICPayとして使う」のではなく、「国際ブランドのタッチ決済として使う」整理だ。 マニアックな話になるが、クレディセゾン本体のGoogle Payは、QUICPay+加盟店での利用を前提にしており、店頭でも「QUICPayで」と伝える案内になっている。つまり、今回のau PAYカードはクレディセゾン委託系の流れに乗りながら、Google Payの使い方は少なくとも一般的なセゾンカードとは別物に見える。技術仕様まで断定はできないが、「セゾン系になったau PAYカードなのに、Google PayはQUICPay専用ではない」という点は興味深い。 今の利用者への影響 いちばん恩恵が大きいのはAndroidユーザーだ。iPhoneではApple Payでの店頭タッチ決済がすでに使えたが、Androidでは今回ようやくGoogle Pay対応。次に、カード番号を券面に載せたくない人にとっては、縦型ナンバーレスを選べる点が実用的な改善になる。逆に、iPhone中心で、今のカード券面にも不満がない人なら、急いで切り替える理由はそこまで大きくない。 ひとことで言うと 2023年の刷新が「au PAYカードを今どきの物理カードにした」アップデートだったなら、2026年の刷新は「au PAYカードをスマホ前提で作り直した」アップデートだ。しかも、その中身をよく見ると、クレディセゾン委託系への移行と、Google Payの“QUICPayではないタッチ決済”対応が並んでいる。今回のニュースは、見た目の変更よりも、こちらのほうが本題だ。
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札幌市営地下鉄、「クレカ乗車」に1日上限 平日830円・土日祝520円を自動適用

札幌市交通局と三井住友カード、JCBなどは、2026年3月26日から札幌市営地下鉄で、クレジットカードなどのタッチ決済による「クレカ乗車」の上限運賃サービス(PDF)を始める。 ポイントは、事前に1日券を買わなくても、その日の利用額が一定額に達したら自動で打ち止めになること。札幌市営地下鉄ではすでにタッチ決済による乗車サービスを実施しているが、今回はそこに「上限運賃」が加わる。観光や買い物、用事のはしごで何度も乗る日ほど、わかりやすくお得に、使いやすくなる。 サービス概要 新サービスでは、札幌市営地下鉄で同じタッチ決済カードや同じスマートフォンを使って乗車した運賃を1日単位で合算し、平日は830円、土日祝と年末年始(12月29日~1月3日)は520円で請求額が止まる。上限に届かなければ通常の運賃だけが請求され、上限を超えたぶんだけ自動で割り引かれる。 いわば、手持ちのカードやスマホが、その日だけ自動で「1日券」になるイメージだ。磁気券を券売機で買う手間がなく、札幌に不慣れな旅行者にもわかりやすい。 利用日 上限額 実質的に自動適用される券 平日 830円 地下鉄専用1日乗車券 相当 土日祝・年末年始(12月29日~1月3日) 520円 ドニチカキップ 相当 そもそも「地下鉄専用1日乗車券」「ドニチカキップ」とは 今回の上限額は、札幌市営地下鉄で従来から売られているお得な企画券に合わせたものだ。 地下鉄専用1日乗車券は、その名の通り地下鉄が1日乗り放題になるきっぷで、大人830円・こども420円。平日に地下鉄を何度も使う日に向く。一方、ドニチカキップは土曜日・日曜日・祝日と年末年始に使える地下鉄専用の1日乗車券で、大人520円・こども260円。週末に札幌中心部を回るときの定番だ。 ここで見逃せないのは、これらのきっぷが今も現金販売だという点。札幌市交通局の案内では、地下鉄専用1日乗車券もドニチカキップも、SAPICA残額やSAPICAポイント、クレジットカードでは購入できない。今回の上限運賃サービスは、そうした「現金で1日券を買う」流れを、タッチ決済側に取り込む動きといえそうだ。 券種 使える日 大人料金 こども料金 購入方法 地下鉄専用1日乗車券 毎日 830円 420円 券売機・定期券発売所など(現金のみ) ドニチカキップ 土日祝・年末年始 520円 260円 券売機・駅事務室・定期券発売所など(現金のみ) どれくらい乗るとお得なのか 札幌市営地下鉄の大人普通運賃は210円~380円。これを踏まえると、平日の830円上限は、たとえば210円区間なら4回で840円となり上限に到達する。290円区間なら3回で870円なので、このあたりから1日券相当のメリットが出る。 一方、土日祝の520円上限はかなり低い。210円区間でも3回で630円になるので、週末に札幌駅・大通・すすきの周辺を往復したり、途中下車を交えたりするだけでドニチカキップ相当の水準に届きやすい。290円区間なら2回で580円なので、少し長めの往復だけでも上限にかかる可能性がある。 つまりこのサービスは、平日は「かなり動き回る日向け」、土日祝は「少し多めに乗るだけでも効いてくる」仕組みだ。 注意点は3つ 便利な一方で、今回の仕組みにははっきりした条件もある。 注意点 内容 対象は地下鉄だけ 札幌市営地下鉄のみが対象。バスや路面電車など、他の交通機関は上限運賃の対象外。 同じカード番号でも媒体が違うと合算されない プラスチックカードで1回、同じカードを入れたスマホで1回、という使い方をすると別計算になる。 大人料金のみ タッチ決済乗車は大人普通料金のみ。小児料金、福祉割引、乗継割引は適用されない。 このため、「札幌の1日券が全部そのままタッチ決済化される」わけではない。あくまで今回ラクになるのは大人の通常利用で、小児や割引利用は引き続ききっぷやICカードが基本になる。 札幌だけではない 全国で広がる「上限運賃」 タッチ決済に1日上限を組み合わせる流れは、札幌だけの話ではない。たとえば横浜市営地下鉄は2025年3月から1日最大740円、ゆりかもめは2025年7月から1日最大820円の上限サービスを実施している。さらに福岡市地下鉄では1日640円の上限に加え、2024年10月からは1か月12,570円の月上限も導入している。 その中で札幌の特徴は、既存の「地下鉄専用1日乗車券」「ドニチカキップ」の金額を、そのままタッチ決済側に自動適用するわかりやすさだ。特にドニチカキップ相当の520円は、札幌の週末利用と相性がよく、地元利用でも旅行者利用でもメリットを感じやすい。 結論 今回の札幌市営地下鉄の上限運賃サービスは、難しい新制度というより、「現金で買っていた1日券を、クレカやスマホで自動化する」動きと見るとわかりやすい。平日は830円で地下鉄専用1日乗車券相当、土日祝は520円でドニチカキップ相当が自動で効く。 特に週末は恩恵が分かりやすく、札幌駅・大通・すすきの・円山公園などを何カ所も回るような日には使いやすい。一方で、地下鉄のみ対象、大人料金のみ、カードとスマホの混在利用は合算されないといった条件もある。便利になるのは確かだが、仕組みを知ったうえで使うと、より損がないサービスになりそうだ。
【三井住友カード/三井住友銀行】Olive口座残高でクレカ積立が最大4.5%に でも条件は「普通預金500万円」、おトクさの一方で少し不思議な設計

三井住友カードと三井住友銀行は、SBI証券の「三井住友カード つみたて投資」で、Olive契約口座の円普通預金残高に応じてポイント付与率を最大0.5%上乗せする新プラン、クレカ積立ポイント付与率UPプランを始める。開始は2026年4月10日積立設定締切分(5月買付分)から。しかも対象はOliveフレキシブルペイに限らず、Olive契約者であれば既存の三井住友カードで積立中でも上乗せの対象になる。 一見すると「Oliveユーザー向けのクレカ積立強化」だが、中身をよく見ると少し独特だ。上乗せ条件は投資額ではなく、あくまでOliveの円普通預金残高。投資を後押しする施策でありながら、同時に現金を厚めに置いている人ほど有利になる設計になっている。 何が変わるのか 新しい上乗せプランでは、毎月8日時点でSMBC IDとVpass IDを連携し、Olive契約口座の円普通預金残高が100万円以上あると、同月10日積立設定締切分のクレカ積立に対してポイント付与率がアップする。上乗せ幅は100万円以上で+0.10%、200万円以上で+0.20%、300万円以上で+0.30%、400万円以上で+0.40%、500万円以上で+0.50%だ。 しかも、ここで大きいのは積立カードそのものはOliveフレキシブルペイでなくてもいいこと。すでに三井住友カード(NL)やゴールド、プラチナプリファードなどで積立をしている人でも、Oliveを契約して普通預金残高の条件を満たせば新しい上乗せを受けられる。 Olive契約口座の円普通預金残高 上乗せ率 月10万円積立時の追加ポイント 年間の追加上限 100万円以上200万円未満 +0.10% 100ポイント 1,200ポイント 200万円以上300万円未満 +0.20% 200ポイント 2,400ポイント 300万円以上400万円未満 +0.30% 300ポイント 3,600ポイント 400万円以上500万円未満 +0.40% 400ポイント 4,800ポイント 500万円以上 +0.50% 500ポイント 6,000ポイント 月10万円の積立を満額続けても、Olive残高による上乗せ分だけで増えるのは最大でも年6,000ポイント。数字としてはわかりやすい一方、最大条件が「普通預金500万円」というのは、かなりハードルが高い。 総合還元率はどこまで上がるのか 今回の最大+0.5%は、もともとのクレカ積立ポイントに上乗せされる。通常付与率の上限と合わせると、理論上の最大還元率は次の通りになる。 カード区分 最大※還元率 Olive上乗せの最大 合計の理論上限 年間最大ポイント (月10万円積立時) 三井住友カード Visa Infinite 4.0% +0.5% 4.5% 54,000ポイント プラチナプリファード系 3.0% +0.5% 3.5% 42,000ポイント プラチナ系 2.0% +0.5% 2.5% 30,000ポイント ゴールド系 1.0% +0.5% 1.5% 18,000ポイント 上記以外のVポイントが貯まるカード 0.5% +0.5% 1.0% 12,000ポイント ※この「最大」はそのまま誰でも受け取れるわけではない。ここで記載している最大還元率には別途、年間カード利用額の条件がある。たとえば一般系は年間10万円以上、ゴールド系は年間100万円以上、プラチナは年間300万円以上、プラチナプリファードは年間500万円以上、Visa Infiniteは年間700万円以上の利用が必要だ。しかも、クレカ積立の利用分そのものは年間カード利用額の集計対象外。積立だけで条件を達成できる仕組みではないことには注意して頂きたい。 おトクではあるが、「投資させたいのか、現金を置いてほしいのか」は少し見えにくい 今回の設計が少し不思議に映るのはここだ。クレカ積立の上乗せ策なのに、最大条件は投資額の増加ではなく普通預金500万円。しかも積立上限は毎月10万円なので、投資の入り口を広げるというより、「投資はしてほしいが、同時に大きめの現金もOliveに置いておいてほしい」というメッセージに見える。 もちろん、現金クッションを厚めに持ちながら積立投資をしたい人には噛み合う。だが、すでに投資を進めていて現金比率をあまり高く置きたくない人からすると、投資を促したいのか、むしろ預金を厚く保ってほしいのか、ややわかりにくい設計とも言えそうだ。少なくとも積立でカツカツの方が無理をして参加をするものではないだろう。 冬の定期預金キャンペーンの次の置き場としてはわかりやすい とはいえ、使い方がまったく見えないわけではない。2025年12月1日に始まったOliveの3カ月もの定期預金キャンペーンは、すでに満期を迎え始める時期に入っている。 つまり、満期資金をそのままOliveの円普通預金に戻しておけば、この新上乗せ、クレカ積立ポイント付与率UPプランの残高条件を満たしやすい。昨冬の定期の次に何をするか迷っていた人にとっては、自然につながる受け皿ではある。 結論 今回の新プランは、Oliveにまとまった普通預金を置ける人、そして月10万円のクレカ積立をきっちり使う人ほど恩恵を受けやすい。いま使っている三井住友カードをそのまま活かせる点も実用的だ。 一方で、上乗せ条件が投資額ではなく普通預金残高に連動するため、制度全体の印象はやや独特だ。クレカ積立を強化するニュースでありながら、実際に強く求められているのは「Oliveに現金を置いてくれること」。ユーザー目線で見ると、たしかにおトクだが、「預金体力がある人向け」の施策と受け止めるのが自然だろう。
リクルートカードプラス、2%還元に幕 “幻の高還元カード”は1.5%時代へ

2026年3月16日、リクルートカードプラス(JCB)のポイント還元率が2.0%から1.5%へ引き下げられた。年会費は本カード2,200円だったのが1,650円、家族カードは1,100円だったのが550円へ見直されるが、無料の通常版リクルートカードが1.2%還元であることを踏まえると、プラスの優位性は大きく縮んだ。長く「2%還元」を看板にしてきたカードだけに、今回の変更はその時代の終わりをはっきり印象づける。 リクルートカードプラスの出発点は2013年だ。リクルート、JCB、三菱UFJニコスの提携でリクルートカード群が立ち上がった際、プラスはJCBのみが発行する上位版として登場した。年会費は当時2,100円(税込)、通常利用で2.0%還元という設計は当時「業界最高水準」と打ち出され、無料版1.2%より明確に一段上の存在だった。リクルート系サービスでの上乗せもあり、還元率重視の利用者にとっては象徴的な1枚だった。当時は漢方スタイルクラブカードなどと共に高還元率カードとして雑誌では1位に挙げられていた。 ただ、このカードは早い段階で“誰でも持てる高還元カード”ではなくなった。2016年3月15日に新規申込み受付が終了し、同年9月16日からはnanacoとモバイルSuicaへのチャージ分もポイント加算対象外となった。以後のリクルートカードプラスは、既存会員だけが維持できるカードとして生き残り、退会すると戻れないという意味でも、既得権に近い希少性を帯びるようになった。まさに「今は申込み不可の幻のカード」という位置づけだった。 その意味で、今回の見直しは単なる条件変更以上の意味を持つ。年会費は下がったものの、還元率は0.5%低下する。しかも無料の通常版との差は、これまでの0.8%から0.3%へと縮小する。冷静に言えば、1.5%でもなお高水準ではあるが、以前のように「年会費を払ってでも持つ価値が分かりやすいカード」とは言いにくくなった。お得感が弱まった、という受け止めは自然だ。 それでも、リクルートカードプラスの価値が完全に消えたわけではない。いまでも通常版より高い還元率を保ち、すでに新規募集を終えたカードである以上、保有自体に希少性がある。ただ、2026年3月16日を境に、このカードの魅力は「圧倒的なお得さ」から「既存会員だけが持てる名残の強さ」へと重心を移した。時代の変化としてはやむを得ないにせよ、2%還元という看板を失ったことで、リクルートカードプラスがひとつの時代を終えたのは確かだ。 今でも申し込めて年会費無料の通常版リクルートカード(1.2%還元)はこちら
「タッチ決済乗車」は「クレカ乗車」へ 普及加速の裏で問われる“名称の正確さ”

公共交通でクレジットカードなどのタッチ決済を使う乗車サービスの呼び名が、転機を迎えている。これまで三井住友カードや交通事業者の案内では「タッチ決済乗車」や「クレジットカード等のタッチ決済による後払い乗車サービス」といった表現が中心だったが、三井住友カードは3月9日の「stera transit シンポジウム2026」で、訴求ワードを新愛称「クレカ乗車」に切り替えていく方針を示した。実際、同社の特設ページでも「いつものクレカで クレカ乗車」と前面に打ち出している。 背景にあるのは、カードのタッチ決済そのものの普及だ。三井住友カードとしては、「タッチ決済」という説明を前面に出さなくても伝わる段階に入りつつあるとみて、より短く覚えやすい「クレカ乗車」で認知拡大を狙う目的らしい。 ただ、この新愛称には見過ごせないズレもある。三井住友カードのFAQは、事前登録なしで使える対象を「タッチ決済」に対応したクレジットカード・デビットカード・プリペイドカードと明記し、別の公式案内でも「クレジットカードだけでなく、デビットカード・プリペイドカードも利用可能」と説明しており、筆者も実際にデビットカードやプリペイドカードをApple Payに登録して交通利用で使っている。実態が“クレカ限定”ではない以上、「クレカ乗車」という言い方は、デビットやプリペイドの利用者に「自分は対象外かもしれない」と受け取られる余地を残す。 しかも、名称の統一はまだ途上だ。2025年末から2026年初の公式キャンペーンページはタイトルで「スマホのVisaのタッチ決済乗車」と掲げながら、本文では「クレカ乗車とは…」と説明する。首都圏11社局の公式発表も、正式名称は「クレジットカード等のタッチ決済による後払い乗車サービス」で、対象にクレジット・デビット・プリペイドを並記している。消費者向けの愛称と、制度を説明する正式名称がずれており、移行期ならではの分かりにくさが残る。 もっとも、普及のスピードは速い。三井住友カードの案内では、2025年3月時点でVisaのタッチ決済に対応する交通機関は124事業者・32都道府県だった。その後、公式リリースベースのstera transit導入公表事業数は2025年12月に45都道府県193事業、2026年2月末には45都道府県221事業まで拡大。さらにシンポジウムでは、2025年度中に45都道府県232事業、約7,000台のバス、約2,200駅に広がる見通しと、2026年2月の月間利用件数が598万件に達したことも示された。 足元でも大型の拡大案件が続く。3月25日には関東の鉄道事業者11社局54路線729駅で相互利用が始まり、Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、Discover、銀聯の7ブランドに対応する。4月1日にはJR九州でも本格導入が始まり、計92駅で利用できるようになる予定だ。いずれも対象はクレジットカードに限らず、デビットカード、プリペイドカード、さらにそれらを設定したスマートフォンまで含む。 一方で、サービスはまだ発展途上でもある。現時点で定期券利用は未対応で、入場と出場は同一カード番号かつ同一媒体で行う必要がある。3月25日に始まる首都圏の相互利用も、当面は大人運賃のみで、定期券など他の乗車券との併用はできない。「クレカ乗車」という言葉は手軽で強いが、実際のサービスは対応駅、ブランド、運賃制度、利用条件を都度確認しながら使う段階にある。 認知拡大のための名称として「クレカ乗車」には力がある。ただ、利用対象の正確さという点では、「タッチ決済対応カードで乗れる」という本来の説明が欠かせない。普及が広がるほど、キャッチーな名称と実態のずれをどう埋めるかが、次の課題になりそうだ。

