
JR東海は3月17日、TOICAのモバイルICサービスとして「ICOCA(TOICAモデル)」を開始した。名前はTOICA寄りだが、仕組みをたどると実体はICOCAになっている。
使うのはJR西日本のICOCAアプリ/モバイルICOCAで、発行主体もJR西日本。TOKAI STATION POINTの規約変更資料では、ICOCA(TOICAモデル)の番号は「JW」から始まる17桁のICOCA番号と明記されている。
そもそも何が始まったのか
AndroidではモバイルICOCAアプリ上でICOCA(TOICAモデル)を発行でき、スマートフォンでICOCAとして使えるほか、TOICAエリアの定期券や東海道新幹線の定期券などを購入・利用できる。iPhoneやApple WatchではAppleウォレットで新規発行でき、既存のTOICA・TOICA定期券を取り込んでICOCA(TOICAモデル)へ移すこともできる。

iPhoneではAppleウォレットの「交通系ICカード」から「TOICA」を選んで追加する流れになっているが、実際に発行されるのはTOICAそのものではなくICOCA(TOICAモデル)だ。
↓券面にTOICAの文言はない

ここが今回のサービスの分かりにくさでもあり、同時に本質でもある。
中身は「TOICA仕様のICOCA」
今回のサービスはゼロから独自のモバイルTOICA基盤を作ったものではない。JR東海とJR西日本の共同リリース(PDF)でも、Appleウォレット対応は「JR西日本のApple PayのICOCAの仕組みを活用したTOICAのモバイルICサービス」と説明されている。Android向けページでもiPhone向けページでも、利用するのはJR西日本が提供するモバイルICOCAアプリ/ICOCAアプリだ。
しかも、iPhone向けの案内ではICOCA(TOICAモデル)はJR西日本が発行し、チャージ残額はJR西日本が管理すると明記されている。TOICAカードを取り込んだ場合も、残高はJR東海ではなくJR西日本の預り金になる。TOKAI STATION POINT側の資料でも、ICOCA(TOICAモデル)はJWから始まる17桁のICOCA番号として扱われている。
見た目はTOICAのひよこ、購入導線も「TOICA」だが、バックエンドはかなりはっきりICOCA側にある。言い換えれば、これは新しいモバイルTOICAというより、JR東海向けの設定を持ったモバイルICOCAだ。
では、わざわざ作るメリットは何か
最大の実益は「JR東海エリアの定期券をスマホで扱えること」にある。
JR西日本の定期券購入案内では、在来線通勤定期券の出発駅について、通常のICOCAはJR西日本の駅、ICOCA(TOICAモデル)はJR東海の駅と整理されている。つまり、同じICOCA基盤でも、どのエリアの定期券を買うかで“モデル”を分けているわけだ。
東海道・山陽新幹線の定期券でも同様で、JR西日本の案内ではJR東海区間(新大阪~新富士間)で完結する区間はTOICAモデルで購入するよう明記している。ここが通常のモバイルICOCAとの最も大きな違いだ。
逆に言えば、普段の改札タッチや電子マネー利用だけなら、TOICAモデルである必然性はそこまで大きくない。 交通系ICカード全国相互利用の対象となる鉄道・バス・店舗で使える点は、利用者目線では「普通のモバイルICOCA」と大きく変わらないからだ。
ユーザーにとってのメリットは3つ
- JR東海エリア発の在来線定期券をスマホで新規購入・継続購入できる
- JR東海完結の東海道新幹線定期券をモバイルで扱える
- iPhoneでは手持ちのTOICA・TOICA定期券を取り込み、さらにTOKAI STATION POINTの「TOICA番号等登録」にもつなげられる
とくに3つ目はJR東海側の文脈で重要だ。TOKAI STATION POINTでは、ICOCA(TOICAモデル)の利用者もTOICA番号等登録の対象となっており、登録者限定クーポンやキャンペーン参加といったJR東海側サービスに接続できる。
結論:一般利用ではICOCA、定期券ではTOICAの顔をする
ICOCA(TOICAモデル)は、名前だけ見ると新しいモバイルTOICAに見える。だが実態としては、JR西日本が発行・管理するICOCAを、JR東海エリアの定期券やTOICA利用者向けに「TOICA仕様」にしたサービスだ。
一般利用ではICOCAそのものに近く、定期券ではTOICAの役割を担う。 その二面性こそが、このサービスの正体と言えそうだ。

