
ファミリーマートがセブン銀行とのATM設置契約を正式に締結した。2026年春ごろから順次、全国のファミリーマート店舗(AFCを除く)に独自デザインのATMを導入し、約4年で約16,000台を展開する計画だ。今回の発表で注目すべきなのは、単なるATMの入れ替えではなく、ファミマの店内金融サービスが「現金の出し入れ」中心から、「スマホ決済」「カードレス入出金」「各種手続き・認証」まで担う方向へ大きく舵を切った点にある。
従来のファミマATMはどうだったのか
現在、ファミリーマートの公式案内では、店内ATMとしてイーネットATMとゆうちょATMの2系統が案内されている。イーネットATMは、出金・入金・残高照会・一部金融機関の振込、暗証番号変更など、従来型のコンビニATMとしての機能が中心だった。
そんな中、今回のセブン銀行ATM導入で大きく変わるのは、ATMの役割そのものだ。ファミリーマートとセブン銀行が今回明示した新機能は、現金の入出金に加え、各種キャッシュレス決済への現金チャージ、そしてセブン銀行の「+Connect」を通じた各種手続きや認証機能の提供である。つまり、新しいATMは「お金をおろす機械」ではなく、「スマホ決済にお金を入れる」「本人確認を伴う手続きを進める」といったデジタル時代の金融端末へと性格が変わる。
何が便利になるのか
特に利便性の向上が分かりやすいのが、スマホATMとの相性の良さだ。セブン銀行のスマホATMは、キャッシュカードなしでスマートフォンだけを使って現金の入出金ができる仕組みで、対応銀行にはauじぶん銀行、NEOBANK 住信SBIネット銀行、PayPay銀行、楽天銀行、ソニー銀行、UI銀行などが並ぶ。既存のセブン銀行ATMでは、PayPay、au PAY、d払い、メルペイ、楽天キャッシュ(楽天ペイ)のほか、交通系IC、楽天Edy、nanacoなどへの現金チャージにも対応している。
ローソン銀行ATMもQRコードを使ったスマホATMを提供しているため、ファミマへのセブン銀行ATM導入が進めば、対応口座や対応アプリを使う利用者にとっては、セブン‐イレブン、ローソン、ファミリーマートという主要3チェーンで、カードレスの現金アクセスがかなりしやすくなる。もちろん、これは導入完了後に一気に実現する話ではなく、実際には2026年春から約4年かけて広がっていく。また、利用できるサービスは銀行やアプリによって異なるため、すべての利用者が同じように恩恵を受けるわけではない。それでも、「財布を忘れてもスマホだけで何とかなる」場面は、確実に増えそうだ。
なぜ「ゆうちょ口座の意味が薄れる」と言われるのか
イーネットATMは置き換わるものの、まだゆうちょ銀行ATMの扱いは正式に発表されていない。だが、この流れのなかで出ているのが、「ゆうちょ銀行の口座を持つ意味が薄れるのではないか」という見方だ。その背景には、これまでファミマのゆうちょATMが持っていた独自の立ち位置がある。ゆうちょ通帳アプリによるATM入出金は、ゆうちょATMと、ファミリーマートなどに設置されているゆうちょの小型ATMが対象だが、他の一般的なコンビニATMは対象外とされている。つまり、ファミマのゆうちょ小型ATMは、ゆうちょユーザーにとって「コンビニでアプリによる入出金がしやすい珍しい場所」だった。
しかも、ファミリーマート等にあるゆうちょATMは平日昼間と土曜昼間が無料、それ以外でも110円で利用できるのに対し、イーネットATM・セブン銀行ATM・ローソン銀行ATMは同時間帯でも220円、それ以外は330円かかる。もしファミマのATMが時間をかけてセブン銀行系へ集約されていくなら、「ファミマなら、ゆうちょが安くて便利」という従来の優位性は薄れやすい。さらに、ほかのネット銀行やデジタル銀行のスマホATM対応が広がれば、コンビニで現金を出し入れするためだけにゆうちょ口座を持つ必要性は、たしかに小さく見えてくる。
コンビニATM競争は次の段階へ
今回の提携は、ファミマがATMを単なる設備ではなく、店舗の来店価値を高める金融インフラとして再定義し始めたことを示している。ファミリーマートは、3,000万ダウンロードを突破した「ファミペイ」の顧客基盤と全国16,400の店舗網を活用しながら、「ファミマ・マネーライフ」という独自の金融サービスを今後展開するとしている。コンビニATMの競争は、もはや「どこで現金をおろせるか」ではなく、「どこでスマホと金融を一体で使えるか」という段階に入ったといえそうだ。

