
札幌市電で、クレジットカードやデビットカードなどのタッチ決済による乗車サービス、いわゆる「クレカ乗車」が始まる。
札幌市交通事業振興公社、札幌市交通局、三井住友カード、ジェーシービー、北海道アトラス、小田原機器、QUADRACは、2026年4月27日から札幌市電の全車両でクレカ乗車サービスを開始すると発表した。
対象となるのは、タッチ決済に対応したクレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、またはカードを設定したスマートフォンやウェアラブル端末など。乗車時のタッチは不要で、降車時に車内の専用端末へタッチすることで運賃を支払える。
札幌市電の全停留場・全車両で利用可能に
今回のクレカ乗車は、札幌市電の全停留場、全車両で利用できる。
対応ブランドは、Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、Discover、銀聯。交通系ICカードのような事前チャージは不要で、対応カードやスマートフォンを持っていれば、現金を用意せずに乗車できる。
札幌市電は観光客の利用も多く、沿線にはすすきの、狸小路、西線エリア、ロープウェイ入口方面など、市内観光や日常利用の目的地が点在する。クレカ乗車の導入により、交通系ICカードを持っていない国内外の旅行者にとっても、市電を使いやすくなる。
一方で、他の交通機関との乗継割引は適用されない。また、現金や他の乗車券との併用はできないため、利用時には注意が必要だ。複数人での利用、福祉割引、こども運賃で利用する場合は、タッチする前に運転手へ申し出る必要がある。
土日祝・年末年始は460円で自動的に乗り放題
今回の導入で注目されるのが、上限運賃サービス「札幌市電クレカ乗車ホリデー割」だ。
土日祝日と年末年始期間に、札幌市電でクレカ乗車を利用した場合、当日の乗車運賃が累計460円に達した時点で、それ以降の運賃は発生しない。つまり、2回分の乗車運賃に到達すると、その日は自動的に札幌市電が乗り放題になる。
従来の1日乗車券のように、事前に窓口やアプリで購入する必要はない。対象日に同じカードや同じスマートフォンで乗降すれば、自動的に上限額が適用される。
ただし、カード本体とスマートフォン、スマートウォッチなど、支払いに使う媒体が異なる場合は、同じカード番号であっても1日の利用額として合算されない。また、上限運賃の対象は大人運賃のみで、複数人利用時は大人1人分のみが上限運賃の対象となる。
北海道ではバスから地下鉄、市電へとクレカ乗車が拡大
北海道ではここ数年、クレジットカードなどのタッチ決済で公共交通に乗れる動きが広がっている。
先行したのは、空港連絡バスや都市間高速バスだ。北海道中央バスは2024年3月、新千歳空港連絡バスや高速あさひかわ号でタッチ決済乗車サービスを開始した。新千歳空港と札幌市内を結ぶ空港アクセス路線で導入されたことで、訪日外国人や道外からの旅行者が、現金や交通系ICカードを用意せずにバスを利用しやすくなった。
その後、ジェイ・アール北海道バスも2025年1月から高速あさひかわ号、流氷もんべつ号で、同年2月から高速おたる号でタッチ決済乗車を開始。札幌と道内主要都市を結ぶ高速バスでも、クレカ乗車の利用範囲が広がった。
さらに、北海道中央バスは2025年12月から、小樽方面の高速4路線にもタッチ決済乗車サービスを拡大した。対象は高速おたる号、高速ニセコ号、高速いわない号、高速よいち号で、札幌から小樽、余市、岩内、ニセコ方面へ向かう観光・生活路線でも利用できるようになっている。
札幌市営地下鉄では全49駅で実証、上限運賃も導入
札幌市内の都市交通では、札幌市営地下鉄が2025年4月からクレカ乗車の実証実験を開始している。
対象は南北線、東西線、東豊線の全49駅。自動改札機に設置された専用リーダーに、タッチ決済対応カードやスマートフォンをかざして入出場する仕組みだ。
札幌市営地下鉄では、2026年3月から上限運賃サービスも始まった。クレカ乗車を利用した場合、平日は830円、土日祝日と年末年始は520円に到達すると、それ以降の地下鉄運賃が発生しない。従来の地下鉄専用1日乗車券やドニチカキップに相当する料金が、自動的に適用される形だ。
今回、札幌市電でもクレカ乗車と上限運賃サービスが始まることで、札幌市内では地下鉄に続き、市電でも「事前購入なしで乗り放題上限が自動適用される」環境が整うことになる。
観光地・北海道との相性は高い
クレカ乗車は、観光地との相性が高い。
旅行者にとって、現地の交通系ICカードを用意したり、券売機で切符や1日券を買ったりする手間は意外と大きい。特に海外からの旅行者にとっては、手持ちのタッチ決済対応カードやスマートフォンでそのまま乗れることは、移動の分かりやすさにつながる。
北海道の場合、新千歳空港を起点に札幌市内へ入り、地下鉄や市電、都市間高速バスで観光地へ移動する需要が大きい。空港連絡バス、札幌市営地下鉄、札幌市電、道内高速バスへとクレカ乗車が広がることで、旅行者の移動導線はよりスムーズになる。
また、利用者側だけでなく、交通事業者側にもメリットがある。現金支払いの減少は、乗降時の時間短縮や運賃収受の効率化につながる。市電やバスのように車内で運賃を支払う交通機関では、支払いのスムーズさが定時運行にも関わってくる。
課題は「交通機関をまたいだ一体感」
一方で、現時点では交通機関をまたいだ割引や上限運賃の合算には制限がある。
札幌市電のホリデー割は札幌市電のみが対象で、札幌市営地下鉄やバスの利用分とは合算されない。札幌市営地下鉄の上限運賃サービスも、地下鉄のみが対象だ。
そのため、利用者にとっては「どの交通機関で、どの上限運賃が適用されるのか」を理解する必要がある。今後、クレカ乗車がさらに普及していくには、対応路線の拡大だけでなく、サービス内容の分かりやすさも重要になる。
札幌観光の移動手段がさらにキャッシュレス化
札幌市電へのクレカ乗車導入は、北海道における公共交通のキャッシュレス化を象徴する動きといえる。
北海道では、まず空港連絡バスや都市間高速バスでタッチ決済乗車が広がり、続いて札幌市営地下鉄、そして札幌市電へと導入が進んできた。今回の市電対応により、札幌中心部の観光や日常移動でクレカ乗車を使える場面はさらに増える。
現金、交通系ICカード、スマートフォン決済に加え、クレジットカードのタッチ決済が公共交通の支払い手段として定着すれば、北海道を訪れる旅行者にとって移動のハードルは下がる。
札幌市電でのサービス開始は、単なる支払い手段の追加にとどまらず、北海道の公共交通が観光需要やキャッシュレス化に対応していく流れの一歩となりそうだ。

