
ANAは、上級会員向けクレジットカード「ANAスーパーフライヤーズカード(SFC)」の制度を2028年度から変更する。新制度では、ANAカードおよびANA Payの年間決済額に応じて、会員サービスが「SFC PLUS」と「SFC LITE」の2区分に分かれる。
年間決済額が300万円以上の場合は「SFC PLUS」となり、ANAラウンジの利用やスターアライアンス・ゴールド相当のサービスを継続できる。一方、年間決済額が300万円未満の場合は「SFC LITE」となり、ANAラウンジは利用できず、スターアライアンスのステータスもシルバー扱いとなる。
これまでSFCは、一度条件を満たして入会すれば、年会費を支払い続けることで上級会員に近いサービスを維持できるカードとして人気があった。そのため今回の変更について、利用者の間では「改悪ではないか」と受け止める声も出ている。
何が変わるのか
今回の変更で最も大きいのは、SFC会員向けサービスが「カードを持っていれば一律」ではなく、年間決済額によって分かれる点だ。
| 区分 | 条件 | ANAラウンジ | スターアライアンス | 追加特典 |
|---|---|---|---|---|
| SFC PLUS | ANAカード・ANA Pay年間決済額300万円以上 | 利用可 | ゴールド | 5,000マイル |
| SFC LITE | ANAカード・ANA Pay年間決済額300万円未満 | 利用不可 | シルバー | なし |
最初の判定期間は2026年12月16日から始まり、その1年間のANAカード・ANA Pay決済額が、2028年度のサービス区分に反映される。新しい区分でのサービス提供は2028年4月から始まる予定だ。
「改悪」と言われる最大の理由
今回の制度変更が「改悪」と言われる最大の理由は、SFCの代表的なメリットだったラウンジ利用とスターアライアンス・ゴールドが、年間300万円以上の決済をしなければ維持できなくなる点にある。
従来のSFCは、ANAのプラチナサービス以上を獲得するなどして入会資格を得たあと、カードを保有し続けることで、ラウンジ利用や優先搭乗、手荷物優先受け取りなどの特典を継続できる仕組みだった。
しかし新制度では、SFC会員であっても年間決済額が300万円未満の場合はSFC LITEとなり、ANAラウンジを利用できなくなる。つまり、SFC会員資格そのものは残っても、従来のSFCらしい中核特典の一部が失われることになる。
改悪ポイント1:ANAラウンジが使えなくなる
最も分かりやすい改悪ポイントは、ANAラウンジの利用条件だ。
これまでSFC会員にとって、空港ラウンジを利用できることは大きなメリットだった。出発前に落ち着いて過ごせるだけでなく、出張や国際線利用では移動の快適性に直結する特典でもある。
ところが2028年4月以降、年間決済額が300万円未満のSFC LITE会員はANAラウンジを利用できない。SFCの価値をラウンジ利用に感じていた人にとっては、制度変更の影響はかなり大きい。
改悪ポイント2:スターアライアンス・ゴールドからシルバーへ
もうひとつの大きな変更は、スターアライアンスのステータスだ。
従来のSFC会員は、スターアライアンス・ゴールドとして扱われてきた。スターアライアンス・ゴールドでは、加盟航空会社利用時のラウンジ利用、優先チェックイン、優先搭乗、手荷物優先受け取りなど、国際線利用時に便利なサービスを受けられる。
しかしSFC LITEでは、スターアライアンス・シルバー相当となる。シルバーではゴールドに比べて利用できるサービスが大きく減るため、海外出張や海外旅行でスターアライアンス加盟航空会社をよく使う人にとっては、実質的なサービス低下となる。
改悪ポイント3:既存会員も対象になる
今回の制度変更は、新規入会者だけでなく、すでにSFCを持っている人も対象となる。
この点も反発を招きやすい。SFCを取得するために、過去に多くの時間と費用をかけた人も少なくない。いわゆる「SFC修行」をして会員資格を得た人にとっては、「一度取得した特典が後から条件付きになる」と感じられるからだ。
年会費を払ってカードを維持していても、年間300万円の決済条件を満たさなければ、ラウンジ利用やスターアライアンス・ゴールド相当のサービスを維持できない。この点が、今回の変更を「改悪」と見る人が多い理由のひとつだ。
改悪ポイント4:年300万円決済のハードルが高い
年間300万円という条件も、決して低くない。
単純計算では、月25万円のANAカード・ANA Pay決済が必要になる。日常の買い物、公共料金、通信費、旅行代金などをANAカードに集約している人であれば達成できる可能性はあるが、誰にとっても簡単な条件とは言いにくい。
また、すべての支払いが判定対象になるわけではない。ANAカードの年会費、各種手数料、キャッシング、カード付帯の電子マネー利用分、ANAカードからANA Payへのチャージ金額などは対象外となる。法人用ANAカードや海外発行カードも対象外だ。
そのため、「年間300万円分を何らかの形で使えばよい」という単純な話ではない。出張費を会社の法人カードで支払っている人や、電子マネー決済が多い人にとっては、条件達成が難しくなる可能性がある。
制度廃止ではないが、SFCの価値は変わる
一方で、今回の変更はSFC制度そのものの廃止ではない。
年間決済額が300万円に届かなかった場合でも、SFC会員資格が無効になったり、退会扱いになったりするわけではない。ANAグループ運航便に搭乗する場合は、ラウンジ利用以外の各種サービスはこれまで通り利用できるとされている。
また、ANAグループ運航便で100万ライフタイムマイルに到達している人は、ANAカード・ANA Payの年間決済額にかかわらずSFC PLUSの対象となる。長期間にわたってANA便を利用してきた顧客には、一定の救済措置が用意されている。
これからSFCを目指す人への影響
これからSFCを取得しようと考えている人にも、今回の変更は大きな影響を与える。
SFCへの申し込み条件自体は、新制度でも変更されない。引き続き、ANAのダイヤモンドサービスまたはプラチナサービスのステータス獲得、もしくはANAグループ運航便で100万ライフタイムマイル到達が条件となる。
ただし、新規入会時は、100万ライフタイムマイル到達者を除き、一律でSFC LITEからのスタートとなる。その後、判定期間中に年間300万円以上の決済を達成すれば、翌年度からSFC PLUSとなる仕組みだ。
これにより、「一度SFC修行をしてカードを作れば、長期的にラウンジ特典を維持できる」という従来のイメージは大きく変わる。今後は、SFCを取得するだけでなく、毎年の決済実績も重要になる。
どんな人に影響が大きいか
今回の変更で特に影響が大きいのは、ANAカード・ANA Payの年間決済額が300万円未満の既存SFC会員だ。これまでラウンジ利用やスターアライアンス・ゴールドを主目的にSFCを維持していた人は、2028年4月以降、メリットが大きく下がる可能性がある。
また、家族カードを活用してきた世帯、海外出張や国際線乗り継ぎでスターアライアンス加盟航空会社を利用してきた人にも影響は大きい。
一方で、日常決済をANAカードに集約しており、家族カード分も含めて年間300万円を安定して超える人にとっては、SFC PLUSを維持できる可能性が高い。その場合は、ラウンジ利用やスターアライアンス・ゴールドを継続できるうえ、5,000マイルの積算特典も受けられる。
まとめ:SFCは「持っているだけ」から「毎年維持する」制度へ
今回のANAスーパーフライヤーズカードの制度変更は、SFCの価値を大きく変えるものだ。
制度自体は残るものの、ラウンジ利用やスターアライアンス・ゴールドを維持するには、ANAカード・ANA Payで年間300万円以上を決済する必要がある。これまでのように「一度SFCを取得すれば、年会費だけで主要特典を維持できる」という考え方は、2028年度以降は通用しにくくなる。
その意味で、今回の変更は単なる名称変更ではなく、SFCの中核特典を毎年の利用実績に結びつける大幅な制度改定といえる。ANA側は利用状況に応じたサービス提供への見直しとしているが、利用者目線では、ラウンジ利用とスターアライアンス・ゴールドを失う可能性がある点で、「改悪」と受け止められやすい内容だ。

