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クレジットカードのタッチ決済(コンタクトレス決済)で電車やバスに乗る!~QUADRACの「Q-move」の使い方~

クレジットカードのコンタクトレス決済で電車やバスに乗る

日本でも当たり前に使えるようになったクレジットカードのタッチ決済(コンタクトレス決済)、その流れはバスや電車の分野においても例外ではなく都市部から地方に至るまで・・・普段使っているクレジットカードひとつで乗れる環境が日常生活の一部として日本国内でも浸透しつつあります。

今回のエントリーではクレジットカードのタッチ決済で交通利用として国内シェアトップのQUADRACの交通乗車システム「Q-move」の使い方や気を付けなければいけない注意点を解説します。

日本各地で当たり前の光景になりつつある「オープンループ」と国内シェアトップを誇る「Q-move

クレジットカードのタッチ決済など汎用のカードを用いて乗車できるシステムのことを「オープンループ」と呼ばれており、海外ではロンドン・ニューヨーク・シドニーなどをはじめ既に主流となっています。

日本国内では長らくSuicaやPASMOをはじめとする「交通系ICカード」が運賃支払いの方法として用いられているためあまり縁がないと思うかもしれませんが、ここ近年、特に2024年頃から都市部だけに留まらず地方の交通機関でもタッチ決済での乗車システムの導入が相次いでいるのです。

QUADRACが提供するQ-moveは、現在タッチ決済が使える日本国内の鉄道会社・バス会社の90%以上が導入しているタッチ決済やQRコードを使って運用できるクラウド型の交通システムで、このうち「タッチ決済(コンタクトレス決済)による交通利用」は交通システムの部分はQUADRAC、決済の部分は三井住友カードの「stera」と連携して実現させており、これらの交通乗車システムを「stera transit」としてQUADRACと三井住友カードが共同で各事業者へ提供しています。

Q-move機器 1

Q-move機器 2

当初は独自機器を取り付けなければ運用出来なかったものの、日本各地の実証実験導入をきっかけに主要な改札機・バス運賃箱メーカーも現在は対応機器を出しているため、日本各地の交通事業者においても急速に普及が進んでいます。

タッチ決済の交通乗車に対応した主な交通機関

特に昨今、地方で導入が相次いでいる背景として「交通系ICカード導入・更新にかかる高額な費用負担」が理由として挙げられており、熊本県内の交通事業者が交通系ICカードの対応を廃止してタッチ決済に移行する衝撃的な事例も起こるなど、コストを交通系ICカードの半額程度に抑えられる汎用の乗車システムとして採用する例が増えているのです。

Q-moveの登録方法と使い方

Q-moveは交通機関の乗車については登録不要でそのまま利用出来ますが、利用履歴の参照にはマイページの登録が必要です。

マイページの登録は複数枚のカードを登録出来るため、事前に利用するカードは全て登録しておくことをおすすめします。

実カードとカード番号が異なるApple Pay/Google Pay/GARMIN Payの利用も履歴に反映され、各スキームに紐付けた元のカード番号を登録しておくことで自動的に取得されます。

Q-move対応の国際ブランド早見表

マイページの登録・交通利用共に利用できるのは、Visa、Mastercard、JCB、AMEX、Diners、DISCOVERの6ブランドですが、このうちMastercardとJCBについては図表の通り登録・利用時に注意が必要です。

一部の事業者ではVisa・JCB・AMEX以外の国際ブランドには対応していない場合があるため、利用する場合は事前に確認をしておきましょう。

Q-moveのカード通過

利用方法はいたってシンプルで、鉄道の改札の場合は改札機や有人改札に取り付けられているリーダーにカードをかざすだけ。ほとんどの事業者で改札通過時に読み取り音が改札機から鳴りますが一部事業者ではリーダーから小さい音しか鳴らないので目視で確認しなければいけない点には注意しましょう。

こんなときは・・・

紙の特急券を持っている場合

JR九州など一部の鉄道会社で特急列車を利用する場合、紙の特急券を持っている時は改札を通過する際に特急券を改札に投入してからカードをかざします。

運賃箱方式の鉄道やバスで使う場合

バスでタッチ決済

運賃箱方式の鉄道やバス(東急世田谷線・東京BRT・茨城交通など)は乗車と降車の2回、または乗車・降車のいずれかでリーダーにカードをかざしましょう。

注意点として、読み取りまでにかかる時間が1~2秒と長めになっているため、交通系ICカードのように歩きながらの改札通過はやりづらいです。必ず立ち止まってからかざしましょう。

Apple Pay/Google Pay/GARMIN Payで使う場合

Q-moveのスマホ通過

Apple Pay/Google Pay/GARMIN Payでも利用可能で、Apple Payで利用する場合はエクスプレスカードにも対応しているため、あらかじめ設定しておけばFace ID/Touch IDの認証やカードの立ち上げが不要となり、Suica/PASMOのようにそのままかざすだけで通過することも出来るようになります。

エクスプレスカードの設定は現状一部のVisa、Mastercard、JCB、AMEXブランドのみ設定可能、Suica/PASMOとは別に設定を行うので併用も問題なく可能です。

少々注意が必要なのはGoogle Payで、必ずスマートフォンの画面ロックを指紋認証かパスコード・パターンで解除してからリーダーにかざさないと改札で引っ掛かることがあるので頭に入れておきましょう。

スマートフォンやウェアラブルデバイスで利用すると、カードをかざした時よりも読み取りにかかる時間が早いので交通系ICに近いような感覚で改札を通過することが出来ます。

「Q-move」の利用上の注意

ここではQ-moveを利用する際の注意点をご紹介します。全ての導入事業者に共通しての事項なので気を付けましょう。

決済処理は乗車日の翌朝610時に順次処理

Q-moveの利用履歴

利用金額の決済は利用した直後ではなく、当日の利用分は各事業者ごとに合算した金額を翌日の朝6時~10時に順次決済されます。

例外としてエリア単位で一括導入している関西圏・神戸ならびに京急・都営地下鉄(上記図表赤枠内相互の事業者間)の場合は複数社跨いだ利用でも各エリア内で合算し一括で決済されます。

Q-moveは交通系ICカードなどと違い、あとからまとめて精算する方式を取ることで上限運賃の設定も柔軟に対応することが可能で、例えば福岡市地下鉄の1日券相当額(640円)を超えて請求しないサービスを提供したり、鹿児島市交通局では定期券を買わなくても市電・市バスの当月支払い額を9,660円(市バス通勤定期券と同額)までにするサービスを提供しています。

なお、当日の最初の乗車の際にカードの有効性チェックとして0円の決済が発生するのでセキュリティ設定などをかけている場合はあらかじめ解除をしておきましょう。

Q-moveはデビットカードやプリペイドカードも利用できますが、同様に翌日決済となることから残高不足による請求エラーが発生しないように少々多めの残高にした上で利用してください。(目安としては利用金額合計の1.5倍~2倍の金額の残高があると安心)

万が一請求エラーが発生した場合、毎日朝6時~10時に再請求処理が発生するためそれまでに入金をして、かつ、下記のように駅の有人窓口で処理をしてもらう必要があります。

その他、まれに同じ時刻に複数社同時に決済がかかる場合があり、クレジットカードでもカード会社側の不正利用チェックに引っかかって正常に決済が出来ないこともあります。

この場合も下記のような駅の有人窓口での処理が必要となります。

利用履歴の表示が特殊になるケースもあり

主に一括請求エリアの事業者間、複数の事業者が乗り入れる共同使用駅で発生しますが、相互直通区間などを通って2社以上またぐ区間を利用した場合、マイページの利用履歴において運賃や乗車区間が複数に分割される特殊な表示になる場合があります。

ただし、これらは表記上のものであり、実際の運賃請求は正しく行われますので惑わされないようにしましょう。

  1. 相互直通区間の路線の駅で乗車し、乗り入れ先の駅で下車する場合 ※
    (例:阪急京都線の駅から乗車し、大阪メトロ堺筋線の駅で下車)
    →2つの履歴が連続し、乗車駅が上段・下車駅が下段に表示されます。
  2. 乗り入れ先事業者の他の路線へ乗り換え、その際に中間改札を通過する場合 ※
    (例:大阪メトロ中央線の駅から乗車し、近鉄けいはんな線で生駒の中間改札を通過し奈良線の駅で下車)
    →2つの履歴が連続し、中間改札を通過した時刻で境界駅(長田)で出場し再び入場したような表示になり、乗車時刻が実際と異なる表示となります。この場合は最初の乗車駅と最後の降車駅に表示された時刻が正しいものです。
  3. 一括請求対象外の事業者と共同使用している駅で入場する場合
    (例:新宿駅の京王新線・都営大江戸線の改札口から入場)
    →入場した段階で一時的に入場履歴がふたつ表示されますが、京王線・都営地下鉄/京急線のいずれかの駅で出場すると片方が自動的に取り消されます。

※これらの表記についてはQ-moveの専用ヘルプページ(pdf)でも詳しく解説されています。

利用時は大人運賃が基本で10円単位

Q-moveでは現状、交通系ICカードのような子供運賃や障がい者割引などの特殊運賃の事前設定が出来ないことから大人運賃でしか利用することが出来ません。

ただし、福岡市地下鉄では入場時に有人改札で各種証明書を提示することで割引設定の状態で入場可能(出場は自動改札機にかざしてもOK)、運賃箱方式の鉄道やバスで利用する場合は子供運賃や障がい者割引、複数人精算が運転手・係員操作で行えるためタッチする前に伝えてください。

また、首都圏の鉄道・バス会社で採用しているICカードの1円単位での運賃には現時点では対応しておらず、切符と同じ10円単位の運賃精算となります。

Google Pay利用の際の注意

Google Payの本人確認の設定(交通利用)

2024年3月から提供されているGoogleウォレットのバージョン24.10以降で
は、ウォレットの設定項目の中に「交通機関利用時の本人確認設定」が追加さ
れています。

ここの部分のスイッチがONになっている状態で改札を通過しようとすると、
1回目のタッチで生体認証が要求されるため高確率で改札で引っ掛かる恐れが
あります。

この設定はデフォルトでONになっているため、Android端末で利用する場合
は必ずGoogleウォレットの設定から本人確認の設定→交通機関の支払い→「確認が必要です」のスイッチをOFFにしてください。

また、改札を通過する際は指紋認証やパスコード・パターンで画面ロックを解除した後、1~2分以内にリーダーへかざさなければいけないので注意しましょう。

スマートフォンの操作中などの際に改札を通過する場合は一旦スリープにし、再度画面ロックを解除してからかざしてください。

Apple Pay利用の際の注意

Q-moveのApple Pay利用で注意が必要な改札

上記の高見沢サイバネティックスの専用改札機の場合、Apple Payのエクスプレスカードに設定したカードで通過する場合は読み取るまでに通常よりも時間がかかることがあります。

読み取りの最中に少しでもリーダーから浮いたりズレてしまうと読み取りエラーが発生してしまうため、必ず立ち止まってから2秒ほどかざしてください。

また、一部バスのリーダーでは、エクスプレスカードが効かない場合があるので注意しましょう。

その他、下記エントリーのSuica/PASMOと同様に強制パスコード入力になった場合もエクスプレスカードの設定が効かなくなるので注意が必要です。

請求エラー発生時には必ず窓口処理が必要

特にデビットカード、ブランドプリペイドで利用される方は、請求エラーが起こらないように注意が必要です。

万が一請求エラーが発生した場合、再請求処理で決済が成功した場合でも鉄道事業者の窓口端末で「DL解除」と呼ばれる処理を必ず行う必要があります。

これはQ-moveのシステム上による問題で、決済に失敗したカードは「無効カード」扱いとされてしまいます。窓口端末で強制的にエラーとなったカードの有効性チェックをかけないと、どの事業者でも利用出来ません。

また、エラー解除をする場合は事業者によって方法が異なるためここでは2つのパターンでご紹介します。

Q-moveの請求エラーが発生した場合1

請求エラーが発生した事業者が鉄道会社の場合、再請求処理がかかるまで(乗車日の翌日中)はエラーが発生した事業者の有人改札・窓口でエラーを解除する必要があります。

再請求処理がかかった後(乗車日の翌々日以降)はどの鉄道会社の窓口でもエラー解除が可能です。

Q-moveの請求エラーが発生した場合2

請求エラーが発生した事業者が運賃箱方式の鉄道やバス会社の場合、再請求処理がかかるまで(乗車日の翌日中)は発生した事業者の最初の乗車時にリーダーへかざした際、自動でエラー解除がかかります。

再請求処理がかかった後(乗車日の翌々日以降)は駅や営業所の窓口に設置の端末で解除してもらう必要がありますが、バス会社の場合は窓口端末がないケースも考えられるためその際は鉄道会社の有人改札・窓口で解除しないといけないので注意しましょう。

共通の注意として、エラー解除の際は窓口端末の操作に慣れていない係員も居るため、「DL解除(またはDL一括処理)をお願いします」「前日分の請求処理が失敗して改札で入場出来ないので窓口端末で入場の操作をしてください」とお願いをするとスムーズです。

「世界標準」の交通利用が身近に

日本では交通利用における運賃支払いにおいて圧倒的に利用されている交通系ICカード、その処理スピードと利便性はまさに日本特有の様々な事情に特化したシステムである一方、普段のクレジットカードでそのまま乗れるオープンループの仕組みは世界のスタンダードと化しているのです。

元々は訪日外国人向けの需要に対応する目的で誕生したQ-move、2020年の初導入以来様々な事業者への導入・実証実験が行われて以降、現在ではその導入目的も「交通系ICカードの代替手段」としての役割にじわじわ変わりつつあります。

一方で2025年以降は新規導入がさらに加速し、導入がかなり遅れていた首都圏の交通機関も徐々にスタートするため利用する機会は今後ますます増えるかもしれません。

皆さんもぜひ、「世界標準」の交通利用を日本でも体験してみてください。

ちはやるん
著者:ちはやるん
デビット・プリペイドを中心に愛用する長崎県民。 とくにNFCPayは大好物で福岡・大阪・東京に行った時は使って帰らないと気がすまないくらい。Twitter ID: chihayaobachan