概要
国際ブランドとは?
Visa、Mastercard、JCB、American Express、Dinersなどは日本語では国際ブランドと呼ばれます(「国際ブランド」は日本語独自の表現でこのまま英訳しても通じません)。
国際ブランドとは一体何なのかを知るためには、カード決済取引の全体を理解する必要があります。
以下、経済産業省が発表したキャッシュレス・ビジョンに掲載されていた「カード取引のコスト・収益構造」の解説図です。国が作った資料にありがちな初見では目を背けたくなるやつなのですが解説するのでなんとなく眺めてみてください。
左のアクワイアラというのはお店にクレジットカード決済などの導入・運営の手伝いをする会社です。右のイシュアというのは三井住友カードや三菱UFJニコスのようなあなたにカードを発行する会社です。
お店にカード決済を導入する会社と、カードを発行する会社が違う場合、お店で使うときには、誰か間を取り持ってくれる存在が必要になります。そこで登場するの仲介人の国際ブランドです。上図を見ると、アクワイアラとイシュアの双方が仲介してもらった分の手数料を支払っているのがわかります。
世界の決済は国際ブランドのネットワークに支えられています。いやらしい話をすれば、1つ1つの手数料は少なくても、これが全世界的に大量に行われているわけですから、それはそれはすごい儲けでして、特にVisaとMastercardは金融大国アメリカの金融業界においても、大手銀行と横並びの時価総額になっています。
以下、各国際ブランドの特徴を見ていきますが、シェアなどのデータはTHE NILSON REPORTで公表されている2021年度分のデータを参考にしています。
Visa(世界最大の決済ネットワークを担う国際ブランド)
運営会社(本社) | Visa Inc. 本社はアメリカ合衆国カリフォルニア州 |
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取引件数のシェア | 39% |
プロパーカード | なし |
カードラインナップ | クラシックカード / ゴールドカード / プラチナカード / Infiniteカード |
非接触決済 | Visaのタッチ決済国際的にはVisa Contactless |
Visaは誰でも聞いたことがあると思います。名前はValue International Service Associationの略称。
誕生は1958年、アメリカのカリフォルニアでバンク・オブ・アメリカが設立したBANK AMERICARDが始まりです。今やそのバンク・オブ・アメリカ以上の時価総額になっています。
トランザクション数で世界最大の決済ネットワークです。よく「海外に行く人はVisaがオススメ」と言われるのはこれが理由です。39%というシェアは銀聯を含めたシェアなので、銀聯を除くとそのシェアは圧倒的となります。
ロゴは2014年に変更されました。
日本だと三井住友カード、三菱UFJニコス、イオン、楽天、りそな銀行、クレディセゾン、ソニー銀行、三菱UFJ銀行など様々な会社がVisaブランドのライセンスを得てカードを発行しています。
Mastercard(最新テクノロジーを担う国際ブランド)
運営会社(本社) | Mastercard Worldwide本社はアメリカ合衆国ニューヨーク州 |
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取引件数のシェア | 24% |
プロパーカード | なし |
カードラインナップ | スタンダードカード / チタンカード / ゴールドカード / プラチナカード / ワールドカード / ワールドエリートカード |
非接触決済 | Mastercardコンタクトレス |
VISAに次いで高いシェアを誇るMastercard(マスターカード)。日本だとJCBと同等くらいと見られていることも多いのですが、世界的な取引件数のシェアは24%(クレジットカード&デビットカードの合計)と全く違います(JCBは1%ちょい)。
1966年にチェース・マンハッタン銀行を中心として設立されたInterbank Card Associationが始まり。VISAの元祖となるBANK AMERICARDの8年後に作られたということになります。日本だと馴染みがないですが、Maestroというデビットカードのブランドは世界的にも有名です。
MasterCardもVISAを追従するようにロゴを変更することを2016年に発表しました。
日本だとSBIカード、三井住友カード、三菱UFJニコス、イオン、楽天、ポケットカード、クレディセゾン、JTB、アコムなど様々な会社がMastercardブランドのライセンスを得てカードを発行しています。まだ日本の銀行へのライセンス供与は少ないです。
JCB(唯一の国産ブランド)
運営会社(本社) | JCB Co., Ltd.本社は東京都港区 |
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取引件数のシェア | 1%程度American Express、Diners/Discover、JCBの合計が3% |
プロパーカード | あり |
カードラインナップ | JCB一般カード / JCB CARD W / JCBゴールド / JCB ザ・プレミア / JCBプラチナ / ザ・クラスJCBオリジナルシリーズのラインナップ。 |
非接触決済 | QUICPay / JCBのタッチ決済(JCB Contactless) |
JCBは日本発の国際ブランドです。アメリカ以外で国産のクレジットカードブランドを作ったのは、日本のJCBと中国のUNION Pay(銀聯)だけです。
始まりは1961年、今の三菱東京UFJ銀行である三和銀行と今の三菱UFJニコスである日本信販によって作られた株式会社日本クレジットビューロー(Japan Credit Bureau、JCBはこの略)です。
世界的な取引件数のシェアは1%ほどなので、世界ではまだマイナーで日本でのシェアの多いことがわかります。国内での知名度、利用シェアはVISA、MasterCardに匹敵します。
現在のところは、日本、ハワイ、台湾、シンガポールなどでは多くの場所で使えるクレジットカードブランドだと言えるでしょう。
2007年に変更されたので古いロゴに馴染みがある人はもう少ないでしょうが、ロゴの変遷は以下のような感じ。
日本国内だと数々のカードにライセンスを付与するだけではなく、自社でプロパーカードも発行している。JCBオリジナルシリーズと呼ばれるプロパーカードは、一般カード、JCB CARD W、JCBゴールド、JCBプラチナ、JCB THE CLASSICなど豊富なラインナップが揃っており、国内の優待店も多いのが特徴。
American Express(AMEXの愛称で世界で愛される国際ブランド)
運営会社(本社) | American Express Company本社はアメリカ合衆国カリフォルニア州 |
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取引件数のシェア | 3%以下American Express、Diners/Discover、JCBの合計が3% |
プロパーカード | なし |
カードラインナップ | グリーンカード / ゴールドカード / プラチナカード /センチュリオンカードプロパーカードのラインナップ |
非接触決済 | AMEXのタッチ決済国際的にはAmerican Express Contactless |
American Expressの歴史は古く、始まりは運送業として、そして1882年に世界で初めて郵便為替を始めました。ここからトラベラーズチェックの開発、旅行業務、金融業のほうにシフトして現在のAmerican Expressがあります。
そんな歴史があってか、American Expressブランドが付与されているカードは(年会費が高くても)各種旅行サービスが充実しているものが多いです。
日本だとJCBと加盟店業務で提携しているので使える店舗も増えています。↑はとある飲食店でAmerican Expressカードを使った際のレシート。JCBグループ(AMEX)の表記が確認できるかと思います。
ロゴは2017年に若干変更されました。グラデーションがあったのがフラットデザインに。
Diners Club(ステータスの高い会員&加盟店を誇る国際ブランド)
運営会社(本社) | Diners Club International本社はアメリカ合衆国ニューヨーク市 |
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取引件数のシェア | 3%以下American Express、Diners/Discover、JCBの合計が3% |
プロパーカード | あり |
カードラインナップ | ダイナースクラブカード(プラチナクラス) / ダイナースクラブプレミアムカード(ブラッククラス) |
非接触決済 | ダイナースクラブ コンタクトレス (タッチ決済) |
DinersClubのDiners(ダイナース)は食事をする人という意味が由来のアメリカのニューヨーク発のクレジットカード。ニューヨークのレストランで実業家のマクラナマと弁護士のシュナイダーが財布を忘れたことがきっかけで現金払いの不便さを実感、2人でお金を出し合い、カードを持っていればツケ払いが出来るようにしたのがきっかけとのこと。
現在でも高いステータスカードについている国際ブランドの象徴ですが、それは以前からで、年齢が高く(33歳以上)持ち家があって管理職、医師、弁護士などじゃないと持てないという資格制限があったため、高い社会属性を持つ人を対象としてClub(クラブ)というコンセプトが付与された形。
日本では1960年に設立されて、日本で初めてのプラスチック製クレジットカードであるとされている(諸説あるが、Dinersの公式HPではそう書かれている)。シティグループ傘下を経て現在の運営はディスカバーカードインターナショナル。日本では三井住友トラストクラブ株式会社が業務を請け負っている。
加盟店のグレードも高く、発行枚数と保有者のステータスの高さから独自路線を走るクレジットカードの国際ブランドというイメージが強い。
UNION Pay(銀聯、中国発の国際ブランドで驚くべき会員数と決済流通額を誇る)
運営会社(本社) | 銀聯商務股份有限公司本社は中国上海市 |
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取引件数のシェア | 34% |
プロパーカード | なし |
カードラインナップ | – |
非接触決済 | QuickPass |
UnionPayこと中国銀聯は、2002年に設立された中国が国レベルで推し進めている連合組織。中国市場でのシェアは9割を超えるという国際ブランドです。
また、現金の引き出し、キャッシングを除く、サービスの購入金額では2021年、銀聯がMastercardを抜いて2位です。
ただし銀聯ブランドの場合、中国では不動産の購入や事業での商品の卸しなどに使われるといった特殊な事情もあるので一概に比較計測出来ない点には注意が必要です。
日本では三井住友カードと三菱東京UFJニコスが銀聯の国際ブランドが付与されたカードの発行を行っています。
Discover(日本では手に入らない国際ブランド)
運営会社(本社) | Discover Financial Services本社はアメリカ合衆国イリノイ州 |
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取引件数のシェア | 3%以下American Express、Diners/Discover、JCBの合計が3% |
プロパーカード | – |
カードラインナップ | – |
非接触決済 | なし |
日本では馴染みのない国際ブランド、DISCOVERは比較的新しい国際ブランドです。。1985年に百貨店を運営するシアーズによって作られた後、モルガン・スタンレーの手に渡った(現在は独立企業として活動)。
日本では2006年にJCBと提携をしているため、使える店舗が拡大しました(様々な店舗に貼られているステッカーにもディスカバーのロゴが確認できるかと思います)。ただし現在のところ、日本では国際ブランドがDISCOVERのクレジットカードを発行しているところはないので、国内在住の日本人がDISCOVERブランドのクレジットカードを作ることはできません。
国際ブランドは何を選べば良いの?
国際ブランドはそれぞれの良いところを1枚のカードに集約できたら良いのですが、クレジットカード1枚に付いている国際ブランドは基本的に1つだけです。なので、私たちはクレジットカードやデビットカードを作るときにポイント還元率や各種機能だけではなく、国際ブランドも慎重に吟味する必要があります。ポイント還元率だけを追いかけて国際ブランドのことを何も考えないのは、使えなければポイントも何もないわけですから無意味です。
日本ではクレジットカードが使えるお店なら、American ExpressとDinersはお店によっては若干使えないところもある、銀聯、Discoverは注意が必要といったくらいで、VISA、MasterCard、JCBであれば殆ど使えるのですが、海外でクレジットカードやデビットカードを使う機会がある方は、この記事をよく読んで、世界的なシェアを把握してから作ることをオススメします。
海外利用の方にもっともオススメの国際ブランドの選び方は、1枚だけではなく、VISAとMasterCardの国際ブランドのカード、最低2枚は作ること。(それぞれ別のカード会社(イシュアー)が発行しているものだと、よりリスクが下がって良いでしょう)。
クレジットカードの取引に使われている総取引件数のシェアを見るとわかる通り、VISAとMasterCardの2つを合わせると取引件数は63%を占めていて世界では圧倒的に使われている=使えない店舗が少なくなる組み合わせだと言えます。
この基本的な組み合わせを土台として、勝手がつかめてきたら応用を効かせていくのもオススメ。
例えば日本人観光客がよく行くハワイなどで使うのであれば、JCBカードを持っていれば日本人向けに海外旅行をサポートしてくれるJCB PLAZAというサービスがありますし、中国で使うのであれば(特に中国の地方都市に行くのであれば)銀聯が当然便利、ネットは苦手なのでコンシェルジュサービスの充実が欲しいなら電話サポートが充実しているDiners、といった具合に特徴や違いを把握してピックアップをしていきましょう。
それぞれの国際ブランドの違い、特徴を掴んで、うまくクレジットカード、デビットカードと付き合っていってください。
【基礎知識】クレジットカードの国際ブランドは利用者視点でどんな役に立つの?
国際ブランドが何なのかわからない方もいらっしゃるかもしれないので最後に基礎知識を追記します。
国際ブランドはクレジットカード利用者から見た場合、お持ちのクレジットカードがお店で使えるかどうかの判断材料になります。
例えば、以下の写真は某店の入り口に貼ってあったステッカーを撮影したものです(このような支払いに使える決済手段のマークは専門用語でアクセプタンスマークと呼ばれます)。
赤線に囲まれた部分に注目してください。使える国際ブランドが羅列してあり、全ての国際ブランドが使えることがわかります(ちなみに、隣のDISCOVER、銀聯もクレジットカードの国際ブランドなのですが、日本で発行しているクレジットカードには殆ど付いていないのでココでは赤線で囲っていません)。
↑のお店では主要な国際ブランドは全て使えますが、お店側のカード会社や国際ブランドに直接支払う手数料の都合などの理由でVisaとMastercardしか使えなかったり、1つの国際ブランド(Mastercard)のクレジットカードしか使えないコストコのようなお店もあるので事前にチェックが必要です。