2020年3月に登場した三井住友カードのプリペイドカード「かぞくのおさいふ」。
残高の送金や複数カード間での共有など、Visaプリペイドカードを「おこづかい管理のツール」として活用できる新しい取り組みが一時注目を集めました。
筆者の家でも妹に渡すおこづかいを「かぞくのおさいふ」でサービス開始当初からずっと活用しており、本人の成長と共に使う幅も広がってくるようになりました。
今回は競合の子供向けプリペイドカードも出てくる中、かぞくのおさいふを選ぶ理由や気になるポイント、他社のプリペイドカードとの比較も交えて実際の使用感をご紹介します。
概要
かぞくのおさいふの概要
かぞくのおさいふは三井住友カードが発行する「Visaプリペ」の基本機能をベースとし、複数カード間での残高移動や残高共有機能を備えたVisaプリペイドカードです。
カードの券面は8種類から申し込み時に各利用者ごとに選択可能、豊富なパターンから選択可能となっています。
カードの残高管理方法は2タイプ用意されており、親カードと子カードの2枚間で残高を共有する「共通のおさいふ」と親カードと子カードそれぞれ別々に残高管理をする「別々のおさいふ」から選択することができます。
子供の利用を考えた様々な管理機能も備えており、利用通知メールや毎月の利用額上限アラート、ネットショッピング利用可否、海外加盟店利用一括拒否設定と利用したいシーンに合わせて細かく設定することが出来ます。
主に子供にあまり使われたくないゲームの課金や昨今の不正利用被害に遭いやすい海外加盟店の決済を制限することが出来るので安全性の向上にもつながります。
残高管理やチャージは主に「かぞくのおさいふ」アプリを使って親側・子側それぞれで簡単に利用可能、小学校低学年の利用を想定した「ひらがな表記」へ変更出来るのも地味ですが評価できるポイントと言えるでしょう。
※申込時の注意※
カードの申し込み時にはカードごとに暗証番号の設定をする必要がありますが、必ず子供に暗証番号を忘れないように伝えておきましょう。小学校高学年以上であれば子供自身に決めてもらうのも有効です。
実際に持たせて良かったメリット
- 様々な決済の「軸」として使える高い利便性
- チャージ手段が豊富
- かぞくのおさいふアプリで子供でも簡単管理
- 三井住友カード/三井住友銀行との連携
様々な決済の「軸」として使える高い利便性
決済の利便性については断トツの使いやすさと多様さを備えており、カード自体にはVisaのタッチ決済を搭載しているのはもちろんのことApple PayやGoogle Payに登録してVisaのタッチ決済(Apple Payのみ)やiDをスマホで利用できるため使える場所を選びません。
また、意外なところとしてプリペイドではNGになることがあるコード決済のクレジット紐付け払いやモバイルSuica/PASMOのチャージ用カードとして登録することも可能です。
筆者の妹は記事初出時点で小学4年生でしたがカードでの支払いも問題なく行え、「カード出すのがめんどくさい」と言ってもっぱらGoogle PayでiDを使うようになっていきます。
リニューアル記事執筆の現在では中学生になり、週末に列車移動をする機会も出てくるようになりました。
バスや鉄道を大人運賃で利用できるようになったタイミングでモバイルSuicaも設定し、Google Pay経由で渡したおこづかいからSuicaにチャージして鉄道やバスを使っていますが操作方法も1回教えるだけでスムーズに使いこなせています。
チャージ手段が豊富
この手のプリペイドカードは主なチャージ方法がクレジットカードやデビットカードを使うことが非常に多いのですが、かぞくのおさいふはベース基盤に「Visaプリぺ」を使っていることもありクレジットチャージだけでなく現金でチャージする方法も「セブン銀行ATM」と「ローソンのレジ」の2通り用意されているのでチャージ方法に困ることがありません。
また、プリペイドカードの現金チャージの際によくありがちな「アプリからセブン銀行でQR読み取り」といった操作もなく、どちらもカード自体を入れるだけで手軽にチャージすることが可能です。
筆者がOliveフレキシブルペイを使っていることもあり普段はクレジットチャージを活用するのですが、妹本人が臨時でお金をもらう時・移動費は別に母親からもらう時がありこの時にもらった現金をチャージする際にセブン銀行を使ったりしています。
かぞくのおさいふアプリで子供でも簡単管理
かぞくのおさいふアプリでは残高管理や明細確認はもちろんのこと、利用明細ごとに支出ジャンルの振り分けが出来る「レポート」機能が用意されでおり、子供自身に「いつ」「どこで」「何に使ったか」を振り返り支出ジャンルを付けさせることでお金の使い方を学ぶ一環となるため将来的にも役立ちます。
また、親カードのIDとパスワードでかぞくのおさいふアプリにログインすると親カードの残高を子カードへ簡単に送金できる他、子カードの残高や明細の他支出グラフもパッと参照できるため、「あれ?このジャンルでお金使い過ぎてるな・・・」といった使いすぎチェックもパッと簡単に出来ます。
また、カードごとのID・パスワードを使って家計簿アプリ「Moneytree」と連携させることも可能なので「子供に支出ジャンルを手入力でつけさせる癖をつけられないな・・・」場合でも支出ジャンルを自動で振り分けることが出来るのでうまく活用するといいでしょう。
三井住友カード/三井住友銀行との連携
かぞくのおさいふは三井住友カードのVポイント対象クレジットカードや三井住友銀行のOliveフレキシブルペイ(デビット)/SMBCデビットをクレジットチャージ元のカードとして活用することにより、お得に・かつ家計をまるごとカード1枚で管理することが出来るようになります。
三井住友カードのVポイント対象カードやOliveフレキシブルペイ(デビット)/SMBCデビットをクレジットチャージの登録元カードとして設定することで、通常204円かかるチャージ手数料が無料となり、さらにチャージ額の0.25%(クレジット)/0.5%(デビット)のVポイントが貯まります。
また、Vポイントはかぞくのおさいふのチャージにも利用できるため、例えば「三井住友カードの家族ポイントを設定できない子供にVポイント相当分をチャージ残高として分ける」ような使い方も出来ます。
筆者の場合は毎月のおこづかいをOliveフレキシブルペイ(デビット)から親カードへまずチャージ、その後子カードへ送金する方法で渡しています。
チャージに使用するクレジットカードやデビットカードをMoneyForwardなど、ご自身の家計簿アプリに連携させておけば、おこづかいとして渡した分も家計簿の支出ジャンルとして振り分け登録出来るので家計の一元的な管理もクレジットカードやデビットカード1枚で全て出来るようになります。
ここが不満!もう少し改善してほしい気になるポイント
- プリペイドでも低い還元率
- かぞくのおさいふアプリの出来が甘い
- 更新・再発行時の本人確認
- 他社クレジットカードでチャージ手数料がかかる
プリペイドでも低い還元率
なぜか還元率の部分においてもVisaプリぺの仕様を踏襲しており、利用時の特典は月間利用額の額0.25%キャッシュバックしか用意されていません。
一般的なプリペイドカードの中でも還元があるものは0.5%くらい用意されているものがほとんどであるため、もう少し還元率は欲しいところです。
(還元がないプリペイドカードもあるため、無いよりはマシな部分もありますが・・・)
かぞくのおさいふアプリの出来が甘い
元々はWebの会員ページにログインしないと残高や明細が確認できない仕様だったため、かぞくのおさいふアプリ上で確認できるようになったのはかなりの改善になりました。
しかしながら作りこみが甘い部分もまだ見受けられ、クレジットチャージを行う場合は「チャージ」を選択するとブラウザに飛ばしてアクセスするという仕様になっているためアプリ上で完結しません。
同じ三井住友カードのプリペイドでもこうならないのが「Vポイント」アプリで、チャージの際はアプリ内に組み込まれたブラウザ内を使うちょっと強引な仕様になってはいますが、アプリ内だけで全ての操作が完結するようになっているので分かりやすい作りになっています。
他にも上限額通知の設定などの細かいものは会員サイトで行う必要があるため、もう少しこのあたりをアプリ内で完結できるように改善してほしいものです・・・。
更新・再発行時の本人確認
かぞくのおさいふは初回申し込み時の場合、親カード宛ての名義・住所へ子カードもまとめて同封され送られてきますが、カードの更新や再発行の際は各カードごとの名義人・住所へ送られてくるようになります。
カード発送時は顔写真付き身分証明書が原則必要となる「特伝型郵便」で送られてくるため特に子カードの場合は子供であっても本人のマイナンバーカードが無ければならず、受け取りの際も名義人本人が受け取る必要がありたとえ親御さんであっても代理で受け取ることが出来ないようになっていますので注意しましょう。
なお、電話による問い合わせや手続きが必要な場合については親カードの名義人で子カードの分も受付可能です。
他社クレジットカードでチャージ手数料がかかる
クレジットカードやデビットカードでクレジットチャージをする場合、VisaやMastercardであればほとんどのカードでチャージが可能となっていますが、三井住友カード・VJA加盟各社・SMBCFSのクレジットカード、Oliveフレキシブルペイ(デビット)・SMBCデビット以外の自社グループ外のカードでチャージする場合は204円の手数料がチャージする度に発生してしまいます。
実質的にクレジットチャージは自社グループ内のカード専用という状態になっているため、持っていない人は現金でチャージしないと損になってしまうかもしれません。
他のプリペイドカードとの比較
送金機能など、子供のおこづかい用途に利用できる他のプリペイドカードも交えて使い勝手などの比較表をまとめてみました。
かぞくのおさいふ | B/43ジュニアカード | au PAYプリペイドカード | ソフトバンクカード | |
---|---|---|---|---|
年齢制限 | 6歳以上 | 18歳以下 | 制限なし※ | 制限なし※ |
アプリの使い勝手 | △ | ◎ | ◯ | ◯ |
支出管理のしやすさ | ◯ | ◎ | △ | ◯ |
利便性 | ◎ | △ | ◎ | ◯ |
還元率 | 0.25% キャッシュバック | なし | 0.5% Pontaポイント | 0.5% ソフトバンクポイント |
安全性 | ◎ | △ | ◎ | ◯ |
※ 紐付いた携帯回線がカード利用者本人の名義で契約していることが必須条件
わかりやすい操作性が求められる「アプリの使い勝手」、支出振り分けが手間なく出来る「支出管理のしやすさ」、使える決済手段が豊富な「利便性」、利用時の「還元率」、セキュリティや不正利用補償などが用意されている「安全性」の5つの項目でざっと比較してみました。
さすがに「家計簿機能がついたプリペイドカード」という触れ込みで言っているだけあるB/43ジュニアカードがアプリの使い勝手と支出管理のしやすさに関しては突出していますが、一方で利用時の還元がなくApple Pay/Google Payに対応していないことから利便性も低く、不正利用時の明確な補償がありません。
子供が使う以上操作性も重要なアプリの使い勝手は、かぞくのおさいふ以外は文句なしですが支出管理のしやすさにおいてはau PAYプリペイドカードのみ、きちんとした家計簿機能が用意されていないので別途家計簿アプリと組み合わせる必要があります。
利便性についてはカード1枚でApple PayやGoogle Payに対応しているかぞくのおさいふ、Apple Payとコード決済まで使えるau PAYプリペイドカードが突出しています。
子供に使ってもらう上で「スマホだけで決済できる」点はカードを出して決済するよりも簡単に使えるので複数の方法に対応している点は地味に重視するポイントです。
利便性や還元率に問題なしなau PAYプリペイドカードやソフトバンクカードですが、カードを発行する際に携帯回線の契約者名義が本人になっていないと発行しづらい欠点もあるのでケースによっては持たせるハードルが高いかもしれません。
安全性については決済時に3Dセキュアの認証をきちんと実装している点はすべて共通していますが、不正利用時の補償が明確になっているかぞくのおさいふやau PAYプリペイドカードが一番安全に使えると言って良いでしょう。
まとめ
我が家の環境がおこづかいをあげる当人(妹)が同居していないことから「遠隔でお金を送れて利便性の高いもの」として選定し使い始めてからずいぶん経ちますが、利用通知や設定も親側のIDでぜんぶ管理ができるためさながらスマホの子供向け設定のような感覚で管理出来る上、カード利便性もApple Pay/Google Pay両対応であるため本人にもストレスなく使わせることが出来ています。
全ての機能や設定がアプリ上で完結しない点や還元率が0.25%のキャッシュバックなのでここだけイマイチな印象ですが、全体的なバランスが非常に取れているブランドプリペイドです。
子供のお小遣いの替わりとして、キャッシュレス環境の勉強として、幅広く使える「かぞくのおさいふ」をキャッシュレス化の入口として使ってみるのもいいかもしれません。