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クレジットカードのタッチ決済(コンタクトレス決済)で電車やバスに乗る!~QUADRACの「Q-move」の使い方~

クレジットカードのコンタクトレス決済で電車やバスに乗る

日本でも様々なところで使えるようになり、日常的に利用する人もあちこちで見かけるようになったクレジットカードのタッチ決済(コンタクトレス決済)。

その流れは交通利用の分野でも急速に広がりつつあり、バスや電車の利用も交通系カードを用意することなくいつものクレジットカードひとつで乗れる環境が注目を浴びています。

今回のエントリーではそんなクレジットカードのタッチ決済で交通利用が出来るQUADRACの交通乗車システム「Q-move」の概要や使い方を解説します。

海外では既に主流になり始めているタッチ決済(コンタクトレス決済)の交通利用

日本ではSuicaをはじめとした交通系ICカードが交通利用の主流のためあまり馴染みがありませんが、専用の交通系カードを用いらずにクレジットカードやApple Pay/Google Payなどのモバイル決済プラットフォームといった汎用型の決済手段をそのまま用いて利用する仕組みを「オープンループ」と呼ばれており、海外ではニューヨーク、ロンドン、シドニーといった主要都市で急速に利用できる環境が整備されています。

日本でもクラウドで交通システムの構築・管理を行うQUADRACが交通乗車システム「Q-move」を2020年からスタートさせ、現在では日本各地の交通事業者で導入・実証実験が行われています。

「Q-move」について~概要~

QUADRACが提供するQ-moveは、タッチ決済による交通利用を中心にQRコードによるフリーパスなどの企画券のチケットレス化といった様々な機能を包括して運用できるクラウド型の交通システムです。

このうち「タッチ決済(コンタクトレス決済)による交通利用」はQ-moveの中心機能となっており、交通システムの部分はQUADRAC、決済の部分は三井住友カードの「stera」と連携して実現させており、これらの交通乗車システムを「stera transit」としてQUADRACと三井住友カードが共同で各事業者へ提供しています。

Q-move機器 1

Q-move機器 2

当初は専用機器を新設しGPSで取得した位置情報を利用して運賃計算を行う単独のシステムでしか運用出来なかったものの、日本各地の実証実験導入を通して日本信号・高見沢サイバネティックス・小田原機器・レシップ・オムロンソーシアルソリューションズといった主要な改札機・バス運賃箱メーカーも現在は対応機器を提供しており、既存の改札機や運賃箱・運賃表とも容易に連動出来る環境が出来たため本導入や実証実験を行う事業者が急速に広がっています。

※Q-moveを導入している代表的な事業者(本運用・今後本運用が予定されている事業者)※

  • 北都交通
  • 南海電鉄/泉北高速鉄道/南海りんかんバス/南海フェリー
  • 京都丹後鉄道
  • 長良川鉄道
  • 富士急行バス
  • 神戸市交通局(地下鉄)
  • 福岡市交通局
  • 鹿児島市交通局
  • 江ノ島電鉄

上記の他に様々な事業者で実証実験として期間限定導入されており、「空港を中心とした外国人観光客の利便性向上」を目的にしている事業者もあれば、「高額な費用がかかる交通系ICカードが導入出来ない替わりとして」導入する事業者もあり、様々抱えている問題を解決するための検証としての面も見え隠れしています。

Q-moveの登録方法と使い方

Q-moveは交通機関の乗車については登録不要でそのまま利用出来ますが、利用履歴の参照にはマイページの登録が必要です。

マイページの登録は複数枚のカードを登録出来るため、事前に利用するカードは全て登録しておくことをおすすめします。

実カードとカード番号が異なるApple Pay/Google Pay/GARMIN Pay/Fitbit Payの利用も履歴に反映され、各スキームに紐付けた元のカード番号を登録しておくことで自動的に取得されます。

Q-moveのマイページのカード登録画面

マイページの登録・交通利用共に利用できるのは、Visa、Mastercard、JCB、AMEX、Diners、DISCOVERの6ブランドです。Mastercardは2024年10月にかなり遅れて対応しました。

また、JCBデビット/プリペイドは残高が0円の状態では登録できないため1円以上の残高が必要です。

Visa以外の国際ブランドで交通利用が出来る事業者は一部に限られているため、利用する場合は事前に確認をしておきましょう。

Q-moveのカード通過

利用方法はいたってシンプルで、改札機や乗降口に取り付けられている専用のカードリーダーにかざすだけと交通系ICカードと同じなので簡単に利用できます。

注意点として、読み取りまでにかかる時間が1~2秒と長めになっているため、交通系ICカードのように歩きながらの改札通過はやりづらいです。必ず立ち止まってからかざしましょう。

また、かざした際に鳴る音も大変小さいので、読み取ったかどうかは必ず目視でしっかりと確認してください。

Q-moveのスマホ通過

Apple Pay/Google Pay/GARMIN Pay/Fitbit Payでも利用可能で、各スキームでカードが読み取れる状態でかざせばらくらく通過出来ます。

スマートフォンやウェアラブルデバイスでかざすとカードでかざすよりも読み取りにかかる時間が短縮され、交通系ICカードに近いような感覚で利用するスピードで利用することができます。

Q-moveのエクスプレスカード利用(Apple Pay)

またApple Payで利用する場合、エクスプレスカードにも対応しているためあらかじめ設定しておけばFace ID/Touch IDの認証やカードの立ち上げが不要となり、Suica/PASMOのようにそのままかざすだけで通過することも出来るようになります。

エクスプレスカードの設定は現状一部のVisa、Mastercard、JCB、AMEXブランドのみ設定可能、Suica/PASMOとは別に設定を行うので併用も問題なく可能です。

Q-moveの利用履歴

利用した金額は各事業者ごとに当日の利用金額を合算し、利用日の翌朝6時ごろに請求処理を行います。

都度請求処理ではなく一括請求処理とすることで、交通系ICカードでは難しい「運賃の上限額設定」や「異なる事業者との間との乗り継ぎ割引」、「企画乗車券相当の割引」といった事前に購入が必要な割引制度などを自動的に適用させることが出来るようになり、事業者側としても手間なく運賃割引などを柔軟に設定することができます。

「Q-move」の利用上の注意

ここではQ-moveを利用する際の注意点をご紹介します。全ての導入事業者に共通しての事項なので気を付けましょう。

Google Payは事前設定が必要

Google Payの本人確認の設定(交通利用)

2024年3月から提供されているGoogleウォレットのバージョン24.10以降で
は、ウォレットの設定項目の中に「交通機関利用時の本人確認設定」が追加さ
れています。

ここの部分のスイッチがONになっている状態で改札を通過しようとすると、
1回目のタッチで生体認証が要求されるため高確率で改札で引っ掛かる恐れ
あります。

この設定はデフォルトでONになっているため、Android端末で利用する場合
は必ずGoogleウォレットの設定から本人確認の設定→交通機関の支払い→「認が必要です」のスイッチをOFFにしてください。

決済処理は乗車日の翌朝6時に一括処理

利用金額の決済は利用した直後ではなく、当日の利用分は各事業者ごとに合算した金額を翌日の朝6時に決済されます。

なお、当日の最初の乗車の際にカードの有効性チェックとして0円の決済が発生するのでセキュリティ設定などをかけている場合はあらかじめ解除をしておきましょう。

Q-moveはデビットカードやプリペイドカードも利用できますが、同様に翌日決済となることから残高不足による請求エラーが発生しないように少々多めの残高にした上で利用してください。(目安としては利用金額合計の1.5倍~2倍の金額の残高があると安心)

万が一請求エラーが発生した場合、毎日朝6時に再請求処理が発生するためそれまでに入金をして、かつ、下記のように駅の有人窓口で処理をしてもらう必要があります。

利用時は大人運賃が基本

Q-moveでは現状、交通系ICカードのような子供運賃や障がい者割引などの特殊運賃の事前設定が出来ないことから大人運賃でしか利用することが出来ません。

ただし、ワンマン運転方式の鉄道やバスで利用する場合は子供運賃や障がい者割引、複数人精算が運賃箱操作で行えるためタッチする前に申し出をしてください。

一部改札機は要注意(Apple Pay)

Q-moveのApple Pay利用で注意が必要な改札

上記の高見沢サイバネティックスの専用改札機の場合、Apple Payのエクスプレスカードに設定したカードで通過する場合は読み取るまでに通常よりも時間がかかることがあります。

読み取りの最中に少しでもリーダーから浮いたりズレてしまうと読み取りエラーが発生してしまうため、必ず立ち止まってから2秒ほどかざしてください。

また、下記エントリーのSuica/PASMOと同様に強制パスコード入力になった場合はエクスプレスカードの設定が効かなくなるので注意が必要です。

請求エラー発生時には必ず窓口処理が必要

特にデビットカード、ブランドプリペイドで利用される方は、請求エラーが起こらないように注意が必要です。

万が一請求エラーが発生した場合、再請求処理で決済が成功した場合でも鉄道事業者の窓口端末で必ず処理を行う必要があります。

これはQ-moveのシステム上による問題で、決済に失敗したカードは「無効カード」扱いとされてしまいます。窓口端末で強制的にエラーとなったカードの有効性チェックをかけないと、どの事業者でも利用出来ません。

この際にエラーが発生した金額でいったん請求されますが、即座に取り消しがかかるので、完了すれば再び利用できるようになります。

なお、再請求処理が自動的にかかるまでは請求エラーが発生した事業者でしか窓口処理が出来ないので注意が必要です。

特にワンマン運転を行う鉄道やバスでは、そもそも窓口処理用の端末がないこともあるためその場で処理がかけられず、しばらく利用出来なくなるケースも十分に考えられます。

そのため、デビットカードやプリペイドカードで利用する場合は残高不足にならないように注意し、Q-moveの利用明細で当日の利用金額を必ず確認してください。

「世界標準」の交通利用が身近に

日本では交通利用における運賃支払いにおいて圧倒的に利用されている交通系ICカード、その処理スピードと利便性はまさに日本特有の様々な事情に特化したシステムである一方、普段のクレジットカードでそのまま乗れるオープンループの仕組みは世界のスタンダードと化しているのです。

2020年の初導入以来様々な事業者への導入・実証実験が行われており、ますます日本でも身近になってきたタッチ決済(コンタクトレス決済)による交通利用をぜひ体験してみましょう。

ちはやるん
著者:ちはやるん
デビット・プリペイドを中心に愛用する長崎県民。 とくにNFCPayは大好物で福岡・大阪・東京に行った時は使って帰らないと気がすまないくらい。Twitter ID: chihayaobachan